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2019年11月10日日曜日

怪我とプロレス について考察する

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昨日行われた東京女子プロレスのメイン、万喜なつみvsまなせゆうなの一戦。インターナショナル・プリンセス王座をかけた試合だったが、中盤、まなせが首を 掴んで捻り投げようとした瞬間、万喜の右足が不自然な残り方をした。直後、立ち上がることもままならなくなり、1度場外に叩き出すも、最後はまなせがラリアットで試合を終わらせる形で、王座は移動となった。


▼万喜とまなせ、2人の歴史

この二人の歴史は東京女子プロレスにやってくる前、アクト レスガールズの旗揚げ戦にまで遡る。まなせはその前にスターダムでキャリアをスタートさせ、この旗揚げ戦で復帰。万喜はデビュー戦だった。両者共に紆余曲 折を重ね、メインでの王座戦、まなせは普段の紫を基調としたコスチュームではなく、かつてを思い出させる赤のコスチュームに新しい入場曲。しかし、二人の 対決は悲しい幕切れを迎え、まなせはリングの上でベルトを抱きながら号泣した。
 
プロレスラーに怪我はつきものである。怪我をするのも、させるのも二流と言う人間がいるが、どんなにトレーニングをしていたって怪我をするものはする。い や、これはプロレスに限らず、オリンピックを目指すスポーツアスリート、格闘家問わず何かの拍子に怪我をすることは0リスクではない。
ましてやキャリアを重ねれば、どんなレスラーだったとしても怪我を抱えているものだし、その中で何を見せていくかというのもレスラーとしての技術力になっていく。

▼オカダも見せた怪我への苦悩

先日、放送されたGet sportsでオカダ・カズチカが自身の膝の状況と柴田を休養に追い込んでしまったあの瞬間について語った。あのオカダでさえも、怪我や事故を引き起こしてしまうことを考えれば、その言葉にはあまりにも妥当性が無い。
例 えば、スターダムでシングルリーグ戦が開催されており、林下詩美とジャングル叫女の怪我による離脱が発表されているが、この二人がトレーニング不足や経験 不足から起きた事故だとは思えない。熾烈な攻防の中で蓄積したダメージや判断ミスによるものだとすれば、起こりうるものではないか。

【AEWが目指す、健康的で持続的な試合数】

AEWは、レスラーを守るための取り組みとして、全体の興行数100〜120のうち、所属選手一人当たりの出場回数を75回程度にする計画があることを発表している。
これは、WWEや新日のトップ選手のおよそ半分程度の興行出場回数となる。この後始まるTV放送ではおよそ隔週で出演する選手が変わるような構成になると言われているわけだが、それでもこの回数は驚異的である。
AEWが金満的に語られる一面があるが、オーナー、トニー・カーンの持つNFLやサッカーなど他スポーツの常識や演出が持ち込まれている部分は大きいのではないだろうか。
アメリカンフットボールのNFLは年間でレギュラー16試合、最大でも20試合、その他にプレシーズンゲームなどが行われる程度となっている。これは激しいコンタクトによる怪我を避けるために厳しく定められている規定となっている。
アメフトとプロレスで共通する話題と言えば、脳震盪だ。WWEに所属したクリストファー・ノインスキーはハーバード大学のアメフト部出身で、WWEのレス ラーともなったが、2003年のロイヤルランブルで自身も重度の脳震盪から現役を引退、以後プロレスラーやアメフト選手への脳震盪に対する後遺症の啓蒙活 動やコンサルタントを続けてきた。
クリス・ベノワは病理解剖により事故当時、「85歳程度のアルツハイマーの脳に酷似」する状態になっていたとされていたり、ブライアン・ダニエルソンも脳震盪の影響により長期の離脱を余儀なくされた。飯伏も今年の最初に脳震盪からしばらく欠場が続く結果となった。
かつては怪我をおして試合をすることを美徳としてきたが、現在は科学的により深刻な事態を巻き起こす危険性が指摘されていることも考えれば、AEWの選択というのは非常にスマートなものだと言える。
これを実現出来るのは、これまでのハウスショー、TV放映、PPVという形とは異なる収益システムの構築の目処があるからというのは大きいだろうが、旧態の他団体も発想を転換すべきではないだろうか。
 

【大日本プロレスで導入された例】

大日本プロレスでは、メディカル・ローテーションという制度が設けられており、各選手一ヶ月程の間、リフレッシュ期間も兼ねて休養が出来る仕組みが2018年から導入されている。
特にハードコアなどの危険な戦いも多い大日本だけに他団体に先駆けて、時代に合わせた仕組みを取り入入れたと言えるが、これも1つの選択肢だ。
昨日の新日本プロレス鹿児島大会でメインの飯伏、KENTA戦の解説をしていた棚橋が、飯伏が今シリーズ前日からしか帯同していなかったことに触れたが、かつてケニー達外国人選手が地方のシリーズに来ない件でも苦言を呈するような場面が見られた。
確かに年に1回来るか分からない地方の興行に見たい選手が来ない、しかも、団体からすれば今売り出したい気持ちがある選手が来ないということは、チケットの継続的な売上げ、観客の気持ちの問題というのもあるのは確かだ。
しかし、一方で、地方興行の多くがシックスメンタッグで1選手の出場時間が3、4分に満たないものを今の所属選手の多さでどれだけ続けて、興行成績を伸ばし続けれるかという面もある。(それでも国内団体での地方興行の安定性で言えば抜群に高いのが新日ではあるが)
試合時間が短かろうが、長距離移動も選手にとっては負荷になるのは間違いない。この辺りのジレンマを新日本は解決出来ていない。
 

【細分化した女子プロレスと経験値】

プロレスはスポーツであり、格闘技である一方でアートと呼ばれる所以は、対戦相手と織りなす物語であり、アクションという見せ方にあると思う。それは映画にも似ており、固唾を飲む攻防の裏に互いの関係性や感情などが滲むことにある。
そう考えた時に、アクションやカースタントというのは、怪我をしなかったものを使っている、あるいは、怪我をしてもそのまま使っているわけで、怪我や事故がないのが一流だとは限らない。
ただ極力それを減らすためにトレーニングし、打ち合わせや流れの確認をしている。プロレスも同じだ。
AJスタイルズはスタイルズクラッシュ、両足を脇に抱え、腕を足で押さえ込みながら、自分は前方に倒れ込むというフィニッシャーを使う時に、相手に技を知って いるか確認を行ってきた。この技は顎を引いてしまうと首を痛めてしまう可能性があるからだ。YOSHI-TATSUも試合前に確認をされたが、実際に食 らった瞬間、反射的に通常の受け身通り顎を引いてしまったことで、首の骨を骨折することとなったと話している。
アクトレスガールズに所属する有田ひめかはその恵まれた体格からジャンボと呼ばれており、秋山準直伝のジャンピングニーを使うが、先日の大会でW-1所属の才木玲佳がこの技を食らい、顎の骨折から手術を行うこととなった。
男子以上に女子プロレスの細分化は激しく、一方で所属選手が少ないことから様々な選手が他団体に出場しているという状況がある。そうすると選手自身の経験値の少なさ以上に対戦経験の少なさというのも現れる。
かつての全女のようにデビュー前から熾烈な争いをしてきて潰し合いをするのと、様々な選手が出入りして技を受けるのとでは状況が変わってくる部分がある。団 体の違いというのは微妙な間やタイミングの違いに出る部分があり、怪我や事故を引き起こす1つのきっかけにはなりえるだろう。
プロだったら、どこにいても完璧な仕事をしろ、というのはこれに関しては無茶な意見だが、女子プロレスの団体の細分化については選手の育成などを考えると何 か策があってもいいのではないだろうか。結局、細分化することで団体の体力も小さくなっているし、選手層の厚みという意味でも損をしているのは業界自身だ と感じる部分があるのだ。
 
まなせゆうなというレスラーは常に逆風の中を歩いてきたレスラーだった。非凡な同期の注目、怪我からの実質的な引退状態、復帰、観客の期待にどう応えるか…今年、ようやく色々と動いている中で、 持ち合わせた体格と試合の見せ方のようなものがうまく融合してきて、東京女子プロレスの中でも急上昇している中で、今回がキャリア初の戴冠となった。
万喜なつみとのこれまでの歴史にさらに悲劇的なエピソードとしてこの1戦は書き込まれることとなるが、万喜にとってもインターナショナル・プリンセス王座は自身初のベルト戴冠だった。二人のストーリーはここからさらに始まることとなる。



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