今、スターダムに求めたいSNS戦略
前回、国内女子団体の状況をまとめる中で感じたことを少し掘り下げたいと思う。各団体のHPやTwitterなどのSNSを巡って情報の確認を行いながら書いたのだが、”何のためにやっているのか”という点で情報発信力が弱いのではないかと思ったのだ。
スターダムという団体については、少なくとも高いレベルの選手を育てることに成功をしている団体であり、興行数、動員数の安定した団体だと思う。しかし、SNSにおける戦略性を紐解くと、日本国内だけではなく海外からも注目されている今、やるべきことが見えてきた。
【他団体比較をしてみる】
新日本プロレスは規模が違い過ぎるので、後楽園ホールの平均動員数をベースに近い数字の団体を大まかに抜き出してみたのが、下記になる。
・スターダム
Twitterフォロワー2.1万人
Youtubeチャンネル登録者数 9986
動画再生平均 2〜3万
後楽園動員 800〜1000
Twitterフォロワー2.1万人
Youtubeチャンネル登録者数 9986
動画再生平均 2〜3万
後楽園動員 800〜1000
・アイスリボン
Twitterフォロワー4651人
Youtubeチャンネル登録者数 15万人
動画再生平均 1.6万
後楽園動員 800~1000
Twitterフォロワー4651人
Youtubeチャンネル登録者数 15万人
動画再生平均 1.6万
後楽園動員 800~1000
・全日本プロレス
Twitterフォロワー2.4万人
Youtubeチャンネル登録者数 1万
動画再生平均 1万
後楽園動員 1500
Twitterフォロワー2.4万人
Youtubeチャンネル登録者数 1万
動画再生平均 1万
後楽園動員 1500
・NOAH
Twitterフォロワー3.7万人
Youtubeチャンネル登録者数 3.1万人
動画再生平均 1万
後楽園動員 1000
Twitterフォロワー3.7万人
Youtubeチャンネル登録者数 3.1万人
動画再生平均 1万
後楽園動員 1000
・DDT
Twitterフォロワー3.2万人
Youtubeチャンネル登録者数 3.8万人
動画再生平均 1万〜3万
後楽園動員 1000
Twitterフォロワー3.2万人
Youtubeチャンネル登録者数 3.8万人
動画再生平均 1万〜3万
後楽園動員 1000
実際には各団体、自前の動画配信サイトなどもあるが、課金してそこに登録する人の数はこれらの登録者数や再生数よりも少なくなるだろう。それよりもそういう動画資材のSNSでの活用方法などに差があることが分かった。
【公式Twitterに求められる情報とは】
団体の公式Twitterのフォロワー数に関して言えば、男子の大きな団体とも大差がないことが分かる。今後の大会情報やプロモーションの情報が発信される公式Twitterだが、いくつかのポイントに分けて見ていきたい。
・動画
スターダムの公式Twitterでは、自社動画サイトで更新された動画を掲載しているのだが、動画サムネイルの作りが気になったのだ。
基本的にその試合のカード、大会名、ユニット名、選手名、選手写真がサムネイルになっているのだが、これは他の大会の宣伝ツイートの画像と同じ作りになっており、タイムラインで見た時のインパクトが薄い。
圧 倒的にこれが上手いのは、DDTだ。まさに何かが起ころうとする瞬間から1〜2分間をダイジェストではなく切り取って見せている。プロレスにおけるムーブ の凄さ、立ち上がりの緊迫感、DDTならではの不可思議な出来事まで、まさにその瞬間をTwitterのタイムラインで共有している。
さらにDDTの動画についているキャプションや本文が、状況の説明や見た感想を語る口になっており、再生をさせるきっかけとしてよく出来ているのである。
・グッズ情報
新作のグッズが発売されたタイミングで商品の写真と値段、サイズなどがツイートされている。せっかくビジュアルの良い選手がいて、その選手にちなんだグッズを出しているのに、少しもったいない。
全 日本プロレスがグッズ情報のツイートが上手い。最初の新発売情報こそ同じような内容なのだが、選手がその商品を持っている画像を使ったり、公式から出た新 発売情報を選手がTwitterで引用リツイートし、グッズについて語っているのをさらにリツイートすることで、グッズに関する情報量をより多くタイムラ インに流しているのだ。
また、選手がグッズについて触れる際に、オンラインショップの活用を最後に折り込んでい るのが非常にうまい。公式アカウントが直接的に誘導するよりも、ファンと人格を持って接する選手の側が口にすることで、いやらしさを感じない、と思った。 (スターダムのオンラインショップに新作があまり見られないのは製造数の問題なのだろうか、それともグッズは選手の持ち出しなのだろうか………)
・ストーリーライン
一 番気になったのは、この部分だ。専門メディアが少なくなったことで、今、何が起きているのか、誰の抗争なのか、ユニットはどういう目的なのかが非常に伝わ りにくくなった。これはスターダムだけでなく、女子プロレス全体の問題とも言える。加えて、選手個人の発信する方法は増えたにも関わらず、それを上手く使 えてる選手というのが、非常に少ないと思う。
例えば、動画の使い方にも繋がるが、日本の団体の多くは、未だに大会の前に調印式や記者会見を行っている。DDTはそこで起きたこともTwitterの動画としてピックアップを行っている。当然、映像として見てしまうような切り取り方をした上でだ。
ま た、Twitterで抗争を起こす天才といえば、ヨシタツ選手だ。元WWEの29万人という圧倒的なフォロワーへの影響力と、ハッシュタグを使ってファン の繋がりを生んだり、今のストーリーを分かりやすく追えるようにしたり、アンケート機能を使い、自分の企画への是非を問うなど非常に上手い。それまでは会 場の拍手や歓声で計ってたものを可視化し続けている。その結果が、宮原との三冠ヘビー級戦で後楽園1600人超満員札止めを達成していると言える。
【動画配信の難しさ】
個 人的にもYoutubeは非常によく見ているし、プラットフォームとしての強さを感じるところだ。一方、自前の動画配信サイトを持つことで月額での過金額 を回収出来るというのも団体にとっての旨味である。WWE、新日本の売り上げにおいて自社動画サイトの割合は年々強まるばかり。
こ こで取り上げたのは、チャンネル登録者数と動画の平均再生数である。チャンネルに登録しておけば更新時に通知が飛んで来て分かる。動画の再生数はどういう ものが求められるのかが端的に分かると言える。トップYoutuberの多くは、この推移やロジックと世間の話題に対して、非常に敏感に反応をし、研究を している。
・アイスリボンの戦略
アイスリボンのチャンネル登録者数は15万人と群を抜いている。元々、道場マッチの様子を配信したりするなど、積極的な団体ではある。平均再生数はあまり多くないのは、アクティブに見ようとする層ではないようだ。
大会ダイジェストがおおよそ10分でまとめられているが、サムネイルは文字無し、試合の一瞬を切り取ったものだ。7月更新のものからは文字を入れて、マイクの場面をサムネイルにしたのは、おそらくトレンドを研究した結果だろう。
また、INSIDEという選手個人やビッグマッチに向けた選手同士の心境を明かした20分近い動画を上げている。非常に丁寧な作りをしており、そこまでの物語などをきちんと踏まえて予習が出来る非常に良い動画だ。
・NOAHでバズったのは、あの試合
調 印式や試合後インタビューだけでなく、試合の映像も結構載せているNOAHなのだが、7万再生と飛び抜けている動画が、博多スターレーンで行われた丸藤 vs小川戦である。プロレスファンの思いが詰まった会場でのベテラン同士の一戦に対する注目度、見てみようかなと思う力が高いことが分かる。
動画サイトの常として、自分の興味があるキーワードに対して予測してオススメが出てくるわけで、この試合はおそらくそういう形で見られる機会が増えたのだと思われる。最新の情報だけではなく、過去のつながりもYoutubeにとっては重要というわけだ。
・DDTは化け物である
DDTの平均再生数で見ると、実はスターダムとあまり相違がないのだが、DDTの再生傾向として3段階あるのである。まず、地方のアンダーカードの試合、その他ブランドの試合に関しては1500〜1万程度の再生数に落ち着く。
次に、女子の試合でサムネイルに年齢や体格、トレンドワードを文字として入れた試合が2万〜5万再生、1ヶ月に2本程発生している。これは先に説明したように、バズのために研究をされた成果だ。
最後に、1ヶ月に1本、30万再生越えの動画が出ている。傾向としてはALL OUT vs 仙女や今成 vs まなせなど男女混合で非常に注目を集めた試合か、女子選手の体格を煽った動画となっている。
30万再生というのは、WWEのRAWやSMACKDOWN放送後のトピックス動画の平均再生数と同じである。DDTにおいて映像班の力は絶大だということは知っての通りだが、どうやって再生させるかを追い求めた結果と言えるのではないか。
・スターダムの傾向
戻って、スターダムの傾向を見ると、試合のダイジェストの平均は2〜3万再生となっており、他の団体よりも高いことが分かる。試合映像だけでなく、バックステージやセコンドの表情も捉えており、ボリューム感が良いのだ。
一 点あるとすれば、この映像に英語字幕をつけたり、キャプションも英語にすることで、国内だけではなくより広がる力があるように思う。外国人起用に関しても 非常に上手いスターダムだからこそ、グローバルプラットフォームでは力を発揮するはずである。30万再生とは言わないものの、より多くの人の目に触れる機 会が増えれば、団体の認知もさらに高まることになるだろう。
最初にも言ったように、スターダムが内外からの注目を集めているのは間違いない。海外にも女子の団体は多くあるし、前回説明したように国内にも様々な団体はある。しかし、現状を評価するのであれば、スターダムが頭1つ出ていると言える。
ただ選手の知名度やユニットの話題性という部分でも、ファン向けのビジネスに留まっているとも見れる。その垣根を飛び越える一歩はSNSにあるのではないだろうか。
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