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2019年12月7日土曜日

STARDOM:今からでも遅くないスターダム Ep6 花月

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▼苦労人の旅路

仙女の頃から見てるのだから、もう何年になるだろう。彼女は実際、秀でたフィジカルではないし、突出した才能のあるタイプのレスラーではない。だからこそ余計に、今も追いかける彼女にとっての師匠の後ろ姿をリングに立つ時に思い出してしまうのかもしれない。どんなにやっても、追いつけない背中。花月はいつもそれを追っているのだろう。

中学時代には柔道を経験し、卒業と共にセンダイガールズプロレスリングの門を叩く。08年デビュー、キャリアは10年を超えた。当時の仙女は旗揚げしたばかりだから、里村も指導方法や向き合い方に相当の苦労を重ねてきたことは彼女の書籍からも伺い知れる。少数精鋭で張りつめた空気というのは独特な団体ではある。


彼女と同じように仙女を辞めて、フリーになった選手は何人もいる。後の活躍を見れば、あの道場でやってきたトレーニングが非常に優れているということは分かる。それでも結果を掴む事は難しいし、プロレスはいつだってスポットが当たるわけではない。花月はそれをよく知っている。

仙女にいた時もそうだし、フリーになってからの戦績やタイトルマッチを見ても、大一番ではなかなか結果を出せずにいた。ブログの古い過去ログを見ると、その苦悩が伺い知れる。

▼スターダムの他選手と決定的に違う点

スターダムは生え抜きの選手と流れてきた選手が混じっている。外国人選手も加えれば、その比率は半々くらいだろうか。その中でも花月が決定的に他の選手と異なる点がある。それは、フリーの頃に触れたレジェンドの数だ。

仙女を出た彼女は様々な団体をほぼ同時にいくつも掛け持ちする形で参戦することになる。OZ、JWP、WAVE………主な団体はほぼ回っているはずである。その経験の中でも、対抗戦時代を彩った数々の選手、その後のNEOを代表する選手、アルシオンを代表する選手、90年代後半から00年代まで主なレスラーの数々と試合を重ねてきた。

彼女が掲げるのは、"師匠里村を倒して業界No.1に君臨すること"………だが、フリーになった彼女のその道はまさしくいつの日か里村明衣子が通った道だった。

レジェンド達は百戦錬磨である。タフさもプロレスの幅もまさしく右から左まで、ありとあらゆるタイプのレスラーに揉まれて、叩き潰されて、這いつくばって生きてきた。

だから、彼女はフィジカルがなくても、突出した才能がなくても、常に自分の最上のフィジカルを作り、全力でプロレス頭を振り絞ってみせる。圧倒的な経験から生み出された最高で最低なプロレス、それが彼女の仕事である。

▼色濃いAKINOとの繋がり

OZに参戦していた頃、彼女はAKINO率いるMK4というユニットに所属していた。尾崎魔弓率いる正危軍に対し若手を加えたかっこいいタイプのレスラーを集めたユニットである。

どこかボーイッシュで、若くて、生意気さもあるあの頃の姿は確かに昔のAKINOに少し似ている。練習も相当一緒にしたという。コンディションをどうやって保つか、どうやって観客にアピールするか。思えば花月の代名詞とも言えるMany faceというのも、マスクマンとしての顔を持つAKINOに似てると言える。

確かにフリー時代もなかなか結果を出せずにいたのは確かだが、彼女の中にあるのは、そういう時期に自分と接してくれたレジェンドの姿が深く刻み込まれてると思うのだ。

それは彼女のブログ、2019年1月15日のこの一節に感じる。


私がなぜ彼女を選んだのか…




スターダムに入団して
底上げすると言いましたね。

私にとってのキーパーソンは
【葉月】
【渡辺桃】
【ジャングル叫女】

なんですよ。

彼女たちが私や岩谷以上になってもらわないと
困るんですよ。



"赤いベルト"ワールド・オブ・スターダムを防衛、次の挑戦者に同じユニットの葉月を指名した後に書かれたブログ、タイトルは『上を越えると言う難しさ。』という文字が入っている。
フリーとして参戦していた彼女は既に大江戸隊、ヒールとして活動をしていた。その立場からすれば、この一節というのは不思議な立ち位置の話である。フリーから入団し、キャリアが下の若い選手が多い団体で、他所から来たヒール選手が自分のユニットだけではなく、他のユニットの選手も含めて、自分と1期生でスターダムのアイコンである岩谷の名前を出して、超えてもらわないと困ると口にするのだ。
リングの上の話だけなら、自分達が美味しい思いが出来ればいいのがヒールの立ち位置だ。しかし、大江戸隊のリーダーである彼女の言葉の端々には、この思いが溢れることがある。
例えば、このブログの数日後、渡辺桃の持つ"白いベルト"ワンダー・オブ・スターダムに挑戦するも破れてしまったジャングル叫女に対して、昔の自分を見ているよう、と言葉を残したり、シングルトーナメントで同じ大江戸隊の刀羅ナツコの思い切りのいい反則攻撃を全て受け止めて勝利した後、勝ち負けへのこだわりについてマイクを持つなどただのヒールではないのが分かる。
その姿は、彼女があの頃、接していた先輩達の姿なのではないだろうか。
女子プロレスの文脈から見ると、スターダムというのは異質な存在ではある。SEAdLINNNG勢がいなくなった後は、国内の他団体と積極的に絡むこともなく、 自分達の世界観を拡大してきた。これは逆に言うと、多くの先輩、レジェンドのプロレスを知らない、ということだ。
花月は自分の中にある様々な経験を後輩達に託そうとしているに違いない。

▼何故強いのか

彼女の試合を見ると、"やっぱり強い"という言葉が漏れる。これを言語化するのに時間がかかった。何故強いのか、その答えは鍛えているから、だけではない。

スターダムの選手の多くがベースとなる打撃、あるいは得意なムーブで試合を組み立てる。プロレスにはサイコロジーという言葉があり、観客から見た時に説得力のある流れ、惹き付けられる内容の構成かというのは、非常に重要なテーマである。(詳細についてはTajiri著『プロレスラーは観客に何を見せているのか』に詳しい)




刀羅や叫女などキャリアの若い選手の試合を見ていると、案外、最後のフィニッシュムーブに向けて、どこを攻めるのかという構成がバラバラに配置されていることがある。桃は蹴りで頭部にダメージを与えて、Bドライバーにしても各種スープレックスにしても頭を落とす技を持っていることで説得力が高い。

では、花月はというと、そこから一歩進んだ相手のレスリングに合わせて流れを作る、ということが出来るのである。

顕著だったのは、ビー・プレストリーとのワールド・オブ・スターダム戦だろう。両者、非常に的確な攻防の中で、互いのサイコロジーに基づき技を構築している。足を攻めれば、必ず次の一撃も足へと繋げるなど、理に適った動きをしているのだ。

ラリアットが得意な選手であれば、腕を殺しに行くのは本来定石だろう。しかし、スターダムのリングでは蹴りを使う相手の足を殺しに行く展開はあまり多くない。 この説得力こそが彼女の実力の正体と言える。

仙女での基礎的な技術と幾千のレジェンドとの戦いで得た経験は、試合の中のこういう機微に出ているのである。だから、彼女は強い。

▼2020年の展開は

この年末、大江戸隊には様々な出来事が降り掛かった。むしろ現在進行形である。 19年後半の花月の動きを見ていると、あまり表立ってベルトに絡むような動きは少なかった。

ただ、それと反比例するように、師匠里村はDDTのKO-D無差別級王者を始め、海外にも参戦、仙女を引っさげてイギリスでの興行を成功させるなど,ワールドワイドな存在になっている。

だからこそ、彼女に風が吹いていると言える。

他の団体に出て行くのではなく、自分の所属するスターダムを盛り上げて、世界一の女子プロレス団体になったら、彼女の存在は業界No.1に近付く。

どうだろう。

彼女がブログで高らかに響かせる、いつもの笑い声が聞こえてはこないだろうか。


【PREVIEW:STARDOM:今からでも遅くないスターダム Ep5 スターライト・キッド】




https://www.wrestlingismylife.fun/search/label/STARDOM




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