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2021年3月5日金曜日

STARDOM:今からでも遅くないスターダム Ep.9 中野たむのトワイライト・ドリーム

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スターダム10周年記念大会のメイン後の光景を何度も、何度も噛み砕いていくと、自分の中で抜け落ちた1年が丸々そこに存在していたことに気付いたので、筆を取る。19年の終盤、スターダムがブシロードに買われたのをきっかけに、今まで女子プロレスを、スターダムを見たことのない人に向けて、いくつかのシリーズでブログを書いてきた。プロレスというのはストーリーものであるが故に、途中から見始めて面白いのだろうかという不安も付きまとう。そこをぎゅっと濃縮して、この人はこんな人ですよという紹介を勝手ながら出来たら面白いんじゃないかと思ったわけだ。

あの時、2020年は渡辺桃の復活の年になると思っていた。しかし、実際にはそうはならなかった。岩谷麻優の年でもなかった。林下詩美が圧倒的な強さを見せ、上谷沙弥が要所で大きな話題を生み、DDMが一気にその勢力を伸ばした。刀羅ナツコは見違えるようにふてぶてしさを増して、あの大江戸隊をまとめる存在になった。

しかし、10周年記念大会の最後、リングの上に立っていたのは、中野たむだった。誰がこの1年後を想像していただろうか。あの瞬間が訪れるまで、ファンの希望以外でそれを想像していた人間はいるだろうか。だが、よく考えると、到達するべくして到達した光景だったのかもしれないと感じたのである。




▼必要な自己顕示欲と、隣り合わせの不安定


前回のブログで『不安定にラダーを掛けたような存在』と評した。宇宙一カワイイと自分で言い張りながらも、常にどこか不安定で、満たされず、不安を抱えながら生きている。ある意味で、すごく等身大である。自分にないものを持っている人間に嫉妬し、一転して憧れへと変わり、自分もそれに近付きたいということを繰り返してきたようにも見える。

大江戸隊との出会いも、岩谷への恩も、星輝への思いも、ある種身勝手な思い込みと立ち振る舞いで色んなものを巻き込んでいくこと(それで何故か本人の精神状態が不安定になって、深夜に病んでツイートを連発する面倒な女子感まで引っ括めて)が中野たむのストーリーであり、人生なのである。

中野たむのこの1年を振り返ると、大きく3つの事が起きている。星輝ありさとの別れ、ジュリアとの遭遇、COSMIC ANGELSの仲間との出会い。この全てが合わさった上で、あの瞬間を考えるべきではないだろうか。

▼星輝ありさとの別れ、ワンダー・オブ・スターダムへのこだわり


ちょうど前回のブログの最後で書いたのは、星輝ありさとのタッグリーグ戦を制し、王座挑戦の日の深夜にタッグDREAM☆SHiNEを組むまでの心境をTwitterで吐露する様だった。結果、ベルトは取れなかったものの、大江戸隊に裏切られ、岩谷に拾ってもらったのに突然復帰してきて、最愛の岩谷を奪われたという身勝手極まりない難癖から勝手に敵対をし、愛憎入り交じった感情(しかも、いつも自分の劣等感を抉ってくるとか言い出す強烈な僻み)はもつれるように信頼へと変わっていった。

その結果、星輝が返上することとなる白いベルト、ワンダー・オブ・スターダムを巻くべきなのは自分だ、という強いこだわりを持つ。誰でもない、星輝が持っていたベルトだからこそ、自分がそれを引き継いで、輝かせなければいけないという極めて強い自己暗示がそのこだわりを生み出した。

だが、この時点では、中野たむにシングルの印象がなかったのは事実ではないか。ゴッデスにはなかなか恵まれず、なんとか辿り着いたアーティストを経て、DREAM☆SHiNEでもたむが穫られたことでベルトを逃している。後、20年に入っても、シンデレラトーナメント、5★STAR GP共に戦績は振るわず、シングルプレーヤーとしての結果を残せずに来た。

赤のベルトと双璧を為す白のベルトを巻くには、あと一歩が足りていなかった。そこへ現れたのが、お騒がせ女である。

▼"お騒がせ女"ジュリアとの遭遇


"お騒がせ"といえば、中野たむの専売特許だったはずだ。突如としてデスマッチをやると言い出したり、アイドルのプロデュースをしたり、普通のレスラーでは辿り着かない道を歩いてきてるからこそ、話題になるための仕掛けはどんどんしていく。(それで叩かれて若干ヘラる)そこへ、業界のタブーを破ってまで団体を移ってきたジュリアがやってくるのである。

褐色の引き締まった身体、ハーフの顔立ち、サバサバとした空気感、ありとあらゆるものが真反対の二人である。ジュリアを迎え撃ったのは木村花だったが、一件によりジュリアのストーリーも次のステップへと進む。空位となったワンダー・オブ・スターダムへの挑戦だ。

スターダム登場以後、圧倒的な強さを誇るジュリアと、もはや呪詛のレベルでベルトを取りたい彼女はワンダー・オブ・スターダムをかけたトーナメント決勝でぶつかるも、あえなく敗れることとなる。

以降も試合をするかどうか関係なく、ありとあらゆる場所でジュリアとの抗争は勃発。Twitter上でも小競り合いが続く。



▼COSMIC ANGELSとの出会い


捨てる神あればなんとやら。星輝との別れを経た中野たむの元には、同じように芸能活動を経てレスラーとなった白川未奈、ウナギ・サヤカが合流することとなる。出自が近いだけに感性も似ていて、並ぶと華があって、レスラーとしては荒削りなところもある3人が共鳴するのは想像に易いのだが、これもまた岩谷、STARSとの決別を意味することになった。

あれだけ拾ってくれた神と口にしながらも、白川とのタッグに始まり、STARSとの距離は離れていって、特にスターライトキッドとの溝は深く、最終的には決別することとなる。その様も岩谷への感謝を隠し切れないまま、横に並ぶのではなく、スターダムのトップになりたいと口にしたのだ。




シングルでの結果がままならないながら、夢描いたのは宇宙旅行という名のスターダムのトップ。星さえも飛び越えるスケールで描くトワイライト。この3人は泥臭いと自分達で言いながら、自己顕示欲の強さは隠さない。モチーフとなっている旅行というキーワードや写真集のキャビンアテンダント風の衣装も、アイドル時代のぱすぽ☆への憧れなども混じっているのだろうなと感じさせつつ、風向きは大きく変わる。

かつて、岩谷に引き上げられるように手にしたアーティスト・オブ・スターダムに挑戦し、奪取することに成功するのである。

自分の気持ちで色々なものを振り回してきた人間が、自分の元に集まってきた仲間を引き上げる形で新たな宇宙旅行をスタートさせることとなる。

▼手繰り寄せた白い糸


ある意味で、2020年の中野たむは大きな回り道、それも周回遅れレベルの回り道をしたと言える。続くと思っていた星輝とのタッグ、白いベルトへの憧れ、ジュリアという邪魔ものも現れ、シングルの結果は出ず、後半になってCOSMIC ANGELSと出会い、11月に入ってのアーティスト・オブ・スターダムの奪取、12月にはSTARSとの決別を宣言することとなる。

10周年記念大会を前に、髪の毛をかけてでもジュリアとの一戦へとこぎつけたのは、もはや執念としか言いようが無い。ましてやそれが他の試合を押しのけて、メインになるなんて。

岩谷と世志琥の一戦は、1期生同期同士の戦い。当然、10周年記念大会のメインに相応しい。試合後、互いに認め合う様は何故離脱しなければいけなかったのかまで含めて、今後の展開がありうることを感じさせた展開となった。いつものスターダムなら岩谷が最後にマイクを握り、いつものようにすっとんきょうな調子で、みんなをリングの上に集めてスローガンを言って締めるのはいつもの光景だ。しかし、そうはならなかった。

林下と上谷の一戦は、2020年シングルプレーヤーとしての実力を遺憾なく発揮、ワンダー、SWA、フューチャーでの王座戦、5★STAR GP優勝、さらには上谷とのタッグでゴッデス王者になり、11月には念願のワールド・オブ・スターダム王者となった林下と、それを上回る勢いを見せるタッグパートナーであり、天才的な機動力で見るものを魅了する上谷との新時代のスターダムを感じさせる一戦。上谷の攻撃を全て受け切った上で、暴力的な強さを見せた林下の鉄板的な王者象。だが、それでも締めることはなかった。

髪切りという話題が出た時点で、非常にネガティブな反応をしてしまった。いや、これに関しては10周年記念大会で菊タローが出てきた時の選手の引いてる感じからしてもそうだし、武藤の発言で起きた諸々の状況も含めて、今後も業界として同じ状況が続くのか定かではないが、実際のところセンシティブな話だとは思っている。結果的に悲壮感の無いエンディングになったものの、これまでの髪切りの歴史を知っていれば、あんな空気感は見た事もないからだ。それを時代としてしまうなら、シードリングでの髪切りが何故ああならなかったのかを考えねばならないだろう。ただ、中野たむとジュリアは成し遂げた、というわけだ。

一夜明けての話題はどこもかしこもジュリアで埋まっている。だが、あの瞬間、リングに立っていたのは誰でもない中野たむで、自分が勝ったから髪を切らなくていいと言い出し、挙げ句、バリカンを手渡されても敗北者の髪を刈るほどは残酷になれず、刈り上げられた姿がちょっとかっこいいと見るや不満げにする暴虐極まりない自分勝手さを見せる白のベルトの王者の姿だった。

そこにいたのは、星輝でもない、花でもない。ましてや花月でもないし、岩谷でも、桃でもない、林下でも、上谷でもない、ジュリアでもない、中野たむが最後に立っていた。COSMIC ANGELSの仲間達に担がれて、腫れた顔を気にしながら笑ってみせた。周回遅れの宇宙旅行は蛇行運転を繰り返しながら、成層圏を突破した。誰がこの1年後を予想していただろうか。中野たむはスターダムのテッペンを担う一人となったのである。





だけど、この面倒くささはホンモノなので、いつまでも不安定でいてくれと思うのも本当。



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